さよなら犬一

病気で先が長くないと分かったので、車にのせてちょっと遠くへお散歩です。

犬ちゃんは車が大好きです。

多分小さい頃に車に乗って皆で出掛けたのがよっぽど楽しかったのかもしれません。

だから久し振りに車に乗せたら大喜びでした。

車にのって色んな所へ連れてってやりました。

最初は喜んでいた犬ちゃんもだんだんと病気が進行して体力が衰えてきたので、散歩にいってもしんどいのかすぐに帰ろうとするようになりました。

もうすぐ一緒にいられる時間は終わるんだなと感じました。

終わりの日は突然やってきました。

昨日まで散歩に行くらいの元気があったのに、急に状態が悪くなったのです。

その日は仕事中も気が気じゃ有りませんでした。

仕事の合間に家に電話したらまだ生きていたので少しホットしました。

次の日は休みなのでずっと一緒にいてやれるなと思って帰宅しました。

相変わらず辛そうな犬ちゃんを草むらに連れってやるとウンチをしました。

お前って奴はこの死にそうな時にまでちゃんと躾を守って布団の上でウンチをしなかったんだな。

してもよかったのに・・・。

そういえばこいつはほとんど家の中で粗相をしたことが無いなと思いだしました。

ずっと看病を続けていて、時折寝返りを手伝ってやって、ヤカーは何時の間にか眠っていました。

母親に声をかけて起こされて何事かと思ったら、もうかなり呼吸の荒い犬ちゃんがいました。

「もう終わりが近いな」

何故か冷静でした。

そしてだんだんと呼吸が弱くなっていく犬ちゃん。

最後に大きな痙攣をおこし、全身が収縮した後逝ってしまいました。

おしりを見るとウンチをしていました。

最後の最後まで粗相をしないよう我慢してたんだな・・・。

本当にお前は立派な奴だよ、ゆっくりお休み。

 

市役所に届け出を出して、火葬場へ持っていく事にしました。

本当は庭に埋めてお墓を作ってやりたかったけど、庭が狭くて出来なかったのは今でも残念です。

寂しくないように、手紙や花や餌を入れてやり車に乗せました。

そして火葬場で最後のお別れを済ましました。

一緒に行っていた母を家へ送り届け、一緒に散歩した川原沿いの道を歩いてみました。

歩いているうちに今までの思いでが蘇り、とめどなく涙が出てきました。

この時本当に悲しいと思いました。

そしてもう二度と一緒にこの道を歩けないんだと思うと余計に涙が溢れてきました。

こんな日が来るのはもう少し先だと思っていたから・・・。

我慢せずにただ泣くことにしました。

火葬場に連れていく前にいくらか持ってきていた犬一の毛。

ずっと仕舞っとこうと思ったけど、川へ向かって投げました。

何故そんな事をしたのか分からないけれど、この方がいいと思いました。

初めて家に来た犬。

友達のいないヤカーの支えになり、他の家族からも可愛がられていました。

お前が来なければずっと犬・猫禁止の家だったでしょう。

今家にいるたくさんの犬や猫も飼うことは出来なかったでしょう。

お前と一緒に川原の散歩道を歩いた日々はヤカーの胸から消えることは無いでしょう。

一緒にいれて幸せでした。

11年間ありがとう、犬ちゃん。